プロジェクト概要
TPAK の8年間の活動により、インド女性が今なお根深い女性差別、持参金殺人事件、日常的な家庭内暴力、レイプ事件など困難な状況を抱えていることが浮き彫りに なってきました。対象地域は指定部族や指定カーストなど最貧困層の住民が住む地域であり、古い慣習による男尊女卑、貧困のストレスや飲酒等により女性たち が暴力を受けています。村では家庭内の事を口外することがタブーとされ、女性たちは日々不安を抱えながら生活しています。
この環境を変えていくには女性の力だけでは不可能です。先行プロジェクトで育成された人材や村の有力者等を巻き込み、男女が協力し、地域コミュニティ全 体のジェンダー暴力抑止に対する意識を向上させることが重要です。この取り組みにより各村にセーフティネットが構築され、女性たちが安心して暮らせるよう になることを目指しています。
プロジェクトサマリー
プロジェクト名 | ジェンダーによる暴力抑止プログラムとセーフティネット構築プロジェクト (JICA草の根技術協力事業) |
プロジェクト目標 | 対象村10村でジェンダー暴力抑止のためのセーフティネットが機能する。 |
対象地域 | インド北部ウッタラーカンド州デラドゥン県ヴィカースナガル郡の10村 |
受益者層 | 村の男性、若い女性とその家族 約5,000人および対象地域10村のコミュニティ全体 |
期間 | 2014年11月~2019年10月(5年間) |
カウンターパート | Mamta Samajik Sanstha |
活動内容 |
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上位目標 | 対象村の女性たちが暴力におびえることのない生活ができる環境になる。 |
プロジェクトの様子
村の男女双方に「ジェンダー平等」について学ぶ意識啓発活動を行っています。女性には、リーダーシップ・行政施策・RCH(リプロダクティブヘルス)研修を行い、女性リーダーを育成します。また、MSW(Men Standing for Women)という女性への暴力抑止に協力的な男性を中心に、女性リーダーや村の有力者と共に、女性たちにとって安心できる村づくりに力を出し合っていきます。
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安心して暮らせる村にする事業への協力に笑顔で賛成した村の女性たち |
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家庭内暴力には声をあげることが大切と女の子たちが村人の前で寸劇で訴えた。 |
女性にとって安心・安全な村にするため、村の男性にも協力を仰げるよう村で啓発活動を行う。 |
女性の権利を知って、安心な村へ
2019年10月、TPAKのJICA草の根技術協力事業「ジェンダーによる暴力の抑止とセーフティネットの構築」プロジェクトが終了しました。5年をかけて、村の和を乱さないように活動してきたことが実を結び、活動村では村人の意識が変わり、女性への暴力を村の中で解決して行く仕組みが出来上がりました。女性への暴力抑止は、TPAKと現地カウンターパートMamtaが2003年から様々なプロジェクトを積み上げ、真摯な活動を行ってきた信頼関係があってこそ成し得た繊細で困難なテーマです。 プロジェクト開始前には、ほとんどの村人が妻や娘を殴ることを暴力であると自覚していない状況でした。これは受け継がれてきた伝統的行動様式によるものです。数えきれないほど村に足を運び、村人に「男女は平等」、「女性を殴ることはいけない」、「暴力には声をあげよう」「女の子も学校に行かせよう」「隣近所の問題には声を掛け合おう」と訴えました。村の男女はリーダーシップ研修や視察研修を通して知識を深め、村長や村議会メンバーと共にセーフティネットグループを結成しました。彼らは現在、村の中の暴力抑止に尽力するコアメンバーとなりました。日本人専門家によるトラウママネージメント研修を受けた教師や警察官は地域に学んだ内容を教えています。さらに女性リーダーがロールモデルとなることによって、影響をうけた女の子や女性たちが自分たちの権利を知り、復学や手に職をつけるなど自立の道を選択できるよう大きく変わりました。 |
安心な村になるまでの16年の道のり
2003年に始まったTPAKのインドプロジェクトの総集編である「セーフティネット構築」プロジェクトは、2014年に開始しました。まずは地道に村人たちに活動への協力を呼び掛けることから始まりました。反対する声などの困難もありましたが、集会、研修、協力者への表彰、若者への啓発ポスター大会など数えきれないほどの活動を通して、女性たちが頼れる村のリーダー、ヘルプスポットやセーフティネットグループ(SNG)が出来ました。女性たちは今では女性の権利や女性を守る法律について知り、暴力を受けたら、あるいは見かけたらどうするかを理解しています。2019年9月、100人以上が参加したハンドオーバー式典では、村長、リーダー、村人、スタッフ全員が事業終了後の活動の継続と協力を誓って署名を行いました。
活動への協力呼びかけ |
女性を守る仕組み |
様々な啓発活動 |
学校では男女平等やDVをテーマにポスター大会を開催 |
活動継続の誓い |
男女が尊重し合い、暴力のない安心できる村へ
5年間の当事業が完了し、16年間に亘るインド活動の大きな成果につながりましたことは、JICA横浜を始め、TPAK関係者の皆様のお陰と深く感謝しています。インドの村の女性たちがさらに自立し、明るい人生が送れるよう日本からもずっとエールを送りたいと思います。
(TPAKスタッフ一同)